概要
The ACM CHI Conference on Human Factors in Computing Systems(
CHI 2018) でLate-Breaking Workとして発表を行ったので報告する。
CHIはHuman-Computer Interaction分野の研究におけるトップカンファレンスであり、それ故に大規模な会議であった。
また、Late-Breaking WorkはExtended Abstract提出による査読があるポスター発表で、会期中の一日に午前と午後のコーヒーブレイクで計80分の発表をした。
会議が開催されたモントリオールは、ヨーロッパのような伝統的な街並みの旧市街と近代的なダウンタウンがある美しい街だった。
発表準備
査読に通ってから発表に向けて、以下の3点の準備をした。
1. ポスター準備
ポスターは幾度か作り直し、ポスターだけ見ても内容が理解できるように内容を充実させつつも、なるべく大きい文字になるよう心掛けた。
先生から専門家でない人も30秒程度で内容が理解できるようにするというアドバイスを頂き、ポスターの左側は図が中心で要約した内容が書かれていて、右側は文がぎっしり詰まったデザインとなった。
2. 発表練習
ポスターの完成が出発直前になってしまったため、ポスターを使った練習は数える程になってしまった。
一方で、先輩たちに習いExtended Abstractを3日で一周するペースで3週間以上繰り返し音読した。自身としては、この音読はとても効果があったと考える
3. 発表する個人認証システムのデモ実装・公開
デモに関しては通常の認証システムとしては作成していたが、デモ用のシステムとして現地に到着してから改良した。
時差ボケで3時くらいに目が醒めることが多かったため、9時の会議開始までの時間をデモの作成に当てた。
個人的には眠れない夜中の有効な時間の使い方であったと思う(本来であれば出発前に完成するべき)。
発表本番
ポスター発表当日は緊張して英語が頭から飛ぶこともあった。
しかし、はじめの数文は無理せず台本やポスターをそのまま読み上げると、冷静さを取り戻して次第に話せるようになった。
発表を聞いてくださった方々から、「新しいインタラクションだね」や「面白い手法だ」といったコメントをいただけて素直に嬉しかった。
また、実際にデモに触れてくださる方もいて、デモページを作って良かったと感じた。
一方で、後悔も多く残る発表であった。
質問に対して英語がとっさに出てこなかったため、すぐに"Thank you"と言って帰ってしまう方が数人いた。
セキュリティが専門でない人も多い会議で、専門家でない人が英語が喋れない相手と議論する必要がないと思うのは当たり前のことだが、実際に経験してみてとても悔しかった。ただ、国際会議でポスター発表したからこそ、この悔しさを味わえなかったと思うと参加して本当によかったと感じる。
会議
トップカンファレンスだけあって、興味深く勉強になる発表が数多くあった。
会議中はvisualizationやprivacyに関する発表を中心に聴講した。
これらの研究をする人から研究室内のゼミ中に話を聞くことはあったが、実際に研究者のモチベーションも含めて聞くことで以前より関心が強まった。
また、CHIで発表する研究者たちの明確な実験設計を聞き、自身の研究の実験設計等を考え直すきっかけにもなった。
観光・生活
モントリオールはヨーロッパのような伝統的な街並みの旧市街と近代的なダウンタウンがある美しい街であり、治安もよかった。
店等での表記はフランス語が主であったが、店員さんに尋ねれば、英語で商品について丁寧に教えてくれた。
チップに関しても不安だったが、クレジットカードを使用する際に金額を選択する形式が一般的で、適切な金額を考えて迷うことはなかった。
こうした経験から、海外の経験が浅い自身にとってモントリオールはとても過ごしやすい街であった。
一方で、時差ボケには苦しんだ。
現地では、会議が終わる夕方の18時ごろ(日本では早朝)に眠くなって就寝し夜21時ごろ起きて、夕食を食べてからもう2時間ほど寝て、1時ごろから起きているという生活を続けていた。
時差ボケのおかげで、朝に余裕ができて、デモの作成やカフェでのゆったりとした朝食を取ることができた。
しかし、睡魔により夜のレセプションに参加することができなかったのは心残りなので、早い段階で時差ボケを治すことは大切だ。
最後に
国際会議に参加したことはとても有意義な経験であった。
研究面では、他分野も含めてトップレベルの研究を聞くことで、研究室に閉じこもっていては得られないような刺激を受けた。
また、完璧ではないが自分の研究を理解してもらい、貴重なコメントを頂くこともできた。
生活面では、ホテル生活と現地での町並みや食事を楽しむことができた。
他では得難い体験ができるので、これを読んで後輩たちにも国際会議に参加して欲しいと思う。
(欲を言えば、自身も修士学生生活の締めとして、もう一度国際会議に投稿して発表したい)
図1 学会会場
図2 モントリオールでの食事
図3 近くのモントリオール現代美術館
図4 近くのモントリオール・ノートルダム聖堂